マッドメン

ZINE ”My Book Shelf”より

「マッドメン

星大二郎
中央公論社 1993 (中公愛蔵版)
(1975〜1982 『月刊少年チャンピオン』及び同増刊号にて不定期連載)

人類学者である波子の父がパプア・ニューギニアから少数民族の酋長の息子コドワを日本に連れてきたところから物語は始まる。コドワは英語と日本語を話し現代文明の知識を持ちつつも、身体中に刻まれた特殊な入れ墨が象徴するように部族の伝統を体現している少年だった。やがて舞台はパプア・ニューギニアに移り、近代化により失われつつあるニューギニアの伝統と神話が壮大なスケールで描かれる。「オンゴロ神話」という神話をなぞって物語は進んでいくが、この「オンゴロ神話」は日本神話、ニューギニア神話等を元に諸星大二郎が創作したものだそうである。
諸星大二郎は当時パプア・ニューギニアでの取材を希望したがかなわず、数少ない資料と想像力によって『マッドメン』は執筆されたとのこと。40年の時を経てついにパプア・ニューギニアを訪れた様子は『諸星大二郎 マッドメンの世界』(2015/文藝別冊 河出書房新社)にまとめられている。(書き下ろし新作短編もおさめられている。『波子を探して』)
そのような経緯からか、創作と伝承が絡み合い諸星大二郎の独特の絵もあいまって、まるで自分自身が神話に取り込まれてしまうような読後感がある。
日本各地の歴史や伝承を異端の考古学者、稗田礼二郎が調査する『妖怪ハンターシリーズ』も好きで、よく読み返している。「おらといっしょに ぱらいそさ いくだ!」で有名な『生命の木』はシリーズ第一作。ちなみに『奇談』というタイトルで 映画化もされていて、稗田礼二郎は阿部寛が演じている。(未見)
『マッドメン』もNetflixとかで大金をかけて実写化してくれたら観たい。」